福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokanな私のロンドン生活。2017年7月から海外育児生活も始まりました。

イギリスで産後うつになって入院した話

イギリスで出産したあと、見事に産後うつの症状が出てしまった私は、前回の投稿で紹介したMother and Baby Unitという施設に入院をした。

 

結論から言うと、私が必要とするサービスではなかったし、さらに気が滅入りそうだったので、私は一晩だけ滞在して、24時間もしない間に退院してしまった。

 

着いた瞬間から、どうも嫌な予感しかしなかった。古い建物の圧迫感と、都心から離れた疎外感もあり、なんだかとんでもないところに来てしまった感じが半端なかった。待合室に入った瞬間に「こんなところに泊まりたくない・・帰りたい・・・」と、すでに泣きながら夫に言ったのを覚えている。

担当の看護師との挨拶が終わるとすぐに荷物検査があった。自宅から持ち込めるものが制限されていたところで、「あぁ、私は、赤ちゃんや自分に危害を加えてしまうかもしれない可能性があると思われている人なんだ」と実感してしまい、ショックだった。あぁ、これが精神病院なのだと。凶器になりうるものは、例えば携帯の充電用のケーブルも持ち込み禁止だ。また、基本的にスタッフの監視下以外では、赤ちゃんと二人きりになれないようになっている。それに気づいたときも、母親落第の烙印を押されたようだった。

それでも渋々入院することにしたのは、とりあえず寝かせてもらえるなら、寝かせてもらおうということになったから。疲労困憊する夫も、一日でも休めるようにしたほうがいい。ということで、とりあえず一泊だけしてみることになった。

 

到着したのが夕方遅かったので、すぐに面会時間は終わり、夫は帰宅。夜ご飯の時間は終わっていたが、私の分の食事を取っておいてくれたので、看護師さんと夕食を取った。その際、他の患者さんの一人が話しかけてきたのだが、はっきり言ってちょっと言ってることがよくわからない感じだった。他の患者さんは、この人のように明らかに言ってることがおかしいママもいたし、誰とも視線を合わせない、自分の赤ちゃんすら見ていないママもいた。一見平然と子育てをしているように見えるママもいたが、授乳しながら突然泣き出す人もいた。要は、けっこう重度な患者さんが多かったということ。そうすると、ますます自分は場違いな気がしてならなかった。

夕食後は、保育室でオムツ替えや授乳をしているうちにすぐに寝る時間になった。娘は赤ちゃんの寝る部屋に残して、私は個室へ。写真禁止だったので、拙い図面で恐縮だが、間取りはこんなかんじだった。

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保育室には常にスタッフがいる。保育室にバギーが停めてあるのは、ここから赤ちゃんを連れ出す際には、安全のためベビーカーに赤ちゃんを入れて移動しなければならない、と決まっていたから。これも抱っこしていて突然赤ちゃんを落とす恐れがある、危ないママだと思われている証拠だ。

夜通しいろんな赤ちゃんが代わる代わる泣いているのが個室にも聞こえるので、眠りは浅かった。とは言え、産後初めてまとまった睡眠が取れてすっきりした。明け方に授乳をしに行ったときは、一人の保育士さんが赤ちゃんを一人抱っこしてあやしながら、足でバウンサーを揺らして複数の赤ちゃんの面倒を見ている、という状態だった。徹夜の当番の保育士は大変だ・・。

朝食後も、娘が起きている間は保育室にずっと一緒にいた。午前中は他のママたちも、特に何をするでもなく、みんなゆっくりソファで赤ちゃんとくつろいでいたような気がする。娘が寝ると、あまり他の患者さんと話す気分ではなかったので、個室のベッドで休んでいた。個室にいても、30分か一時間おきにスタッフが巡回してくるので、監視されている感じが否めない。

そうこうしているうちに夫との面会時間になり、スタッフとの面談で交渉をして、自宅で回復を目指す方針が決まったのだった。 

 

長期で滞在をすれば、創作活動やガーデニングなどのセラピーや、赤ちゃんとのおうたあそびなど、もっといろいろできたのだろう。他の患者やスタッフと、もっとお話もできたかもしれない。でも、本当にここから早く出たい、家族3人で一緒にいたい、という一心で、一晩過ごすのが精一杯だった。そしてなにより、私の気持ちが回復してきた様子が、自分も周りにも目に見えるようになってきていたので、すんなりと自宅療法が認められることとなった。

 

次回、産後うつから回復した経緯について書こうと思う。