福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokan の私からみたロンドン生活

イギリスで産後うつになったときに使えるサービス

イギリスで出産をして良かったと思う理由の一つが、産後のメンタルヘルスへの理解度の高さだ。前回のブログでも書いたように、私のメンタル面はガタガタだった。

fukuokaninlondon.hatenablog.com

そんな私には、本当にたくさんの救いの手が差し伸べられ、おかげさまですぐに回復に向かうことができた。今日はどのような制度がイギリスには整えられていたかを紹介する。先に言っておくが、以下のサービスはイギリス国民保険(NHS)のおかげで全て無料である。(ただし、ビザの種類などによっては外国人は一部NHSサービスは有料なこともあるので注意)

 

制度①:助産師さんの訪問

イギリスでは出産後、早い人ではその日のうちに退院することになる。ただ、退院後そのまま野放しにされるわけではなく、Community Midwifeと言われる地域の助産師さんが各家を数日おきに訪問してくれる仕組みになっている。我が家にも退院翌日から2日おきくらいに助産師さんが来てくれて、赤ちゃんの様子を見たり、私の体の回復具合を確認したりしてくれた。経過次第では、この訪問も一週間から10日ほどで終わるのだが、まだまだ助けが必要だとみなされると、生後28日くらいまでは訪問が続くことになる。

私の場合、早い段階で涙ながらに産後の気持ちを助産師さんに相談できたことが幸いし、他のサービスにつなげてもらうことができた。そして、恐らく要チェック人物リストに名をのせてしまったため、生後28日まで訪問を延長してもらうこととなった。産後一ヶ月、定期的に不安なことを相談できる人がいること、「あなたは大丈夫?」と聞いてくれる人がいるというのは、大変安心感がでるものである。また、定期的に他の大人と話ができる、というだけでも、どうしても疎外感が出てきてしまう産後においてはありがたい仕組みだ。 

 

制度②:一般医(GP)への相談

さて、産後10日ほどでうつっぽいと助産師さんに判断されたあと、まずやりなさい、と言われたのはGPと言われるかかりつけの一般医、ホームドクターへ行くことだった。こういう場合、GPの役目とは、もっと専門のサービスへ患者を照会することである。イギリスでは、GPから照会をしてもらわないと他の専門サービスを受けられないことも多く、ちょっと面倒な仕組みではある。ただ、もう助産師が来ていない時期にうつっぽくなってしまった場合は、その後の手続きのスピードを上げるためにも、すぐにGPに行くことをおすすめする。

GPと話しながらも涙ぐんでしまった私なのだが、大変親身に話を聞いてもらい、制度③、④へと進む用意をその場で整えてくださった。

 

制度③:A&Eへの照会

Accident & Emergency、略してA&Eとは大病院の緊急科である。その日のうちに誰か専門家に手をうってほしい場合、ここに行くことになる。制度④のサービスを受けられるのが翌週になるかもしれない、とのことだったので、より早く専門家(私の場合は精神科医)に会えるようにと、GPがA&Eへの紹介状を書いてくれた。GPに行ったその足で、すぐに大病院へ向かった。

結果から言うと、このA&Eのサービスは本当にひどかった。運が悪かっただけかもしれないが、5時間近く待たされた上に、深夜近くにやっと会えた精神科医はまだ経験も浅く、「ただのベイビーブルーよ」と大して話もしないで帰されてしまったからだ。しかし、他の病院ではこうもひどくないかもしれないので、早く助けが必要な場合は諦めずに念のためA&Eへは行ったほうが良いと思う。

 

制度④:Perinatal Mental Health (周産期メンタルヘルス)チーム

イギリスの大病院には通常の精神科とは別に、妊婦や産後のママのメンタルヘルスをサポートするチームが存在する。ここへもGPが連絡をしてくれていたので、GPへ行った翌日に専門のカウンセラーが訪問をしてくれた。前夜のA&Eの対応に半ばあきれながら、この人も親身に話を聞いてくれたうえ、ここでようやく具体的な対応策(私の場合は制度⑤を利用すること)が打ち出されることになる。

このチームには精神科医、カウンセラー、看護師、保育士などが存在し、必要に応じて様々なサポートを提供してくれる。例えば、育児への自信の無さからうつ症状が出ていると判断された場合は、保育士が訪問してくれるようになる。赤ちゃんの抱き方の指導や、おうた遊びなど、赤ちゃんとママの心が通えるようにお手伝いをしてくれるのだ。また、赤ちゃんと二人きりで出かけるのが不安なお母さんには、保育士さんが付き添って、近くの公園やカフェくらいまで行ってくれたりするそうだ。

なにかのトラウマが原因で鬱になっている場合は、カウンセリングも受けられるし、お薬が必要だと判断された場合は処方箋も出るようだ。

私の場合は、もう少し緊急に対応する必要があると判断されてしまった節があり、上記いづれのサービスを受ける前に、次に紹介する制度⑤へ進むことになったのだが、まぁそれもまた運だった気がする。

ちなみに、わりと症状が落ち着いても、しばらくは担当のカウンセラー、もしくは看護師が、定期的に訪問もしくは電話で様子を見に来てくれるようになっている。万が一うつ症状が戻ってきてしまっても、すぐにキャッチできるようになっているように思う。完璧に回復したと見なされるまで、しっかり手を繋いでくれている安心感はありがたい。

 

制度⑤:Mother and Baby Unit(お母さんと赤ちゃんのための施設)

この施設は、制度④の拡大版、といったかんじなのだが、要は精神科医、看護師、保育士、カウンセラーなどの専門チームのサポートを、泊りがけで受けられる施設である。

例えば、産後うつのママの多くは睡眠不足に悩まされている場合が多いため、専門の看護師・保育士が夜通し赤ちゃんの面倒を見てくれる。希望すれば、夜中も授乳は可で、起こしに来てくれるが、ミルクだったり搾乳していたりしたら、ママは一晩中寝ていられる。

週に一度、スタッフと患者のグループミーティングがあり、回復具合の確認をし、今後のプランを立てていくのだそうだ。例えば、カウンセリングが必要なのであれば、施設内で受けられるようにここで調整される。もしくは、創作活動や園芸などを通したセラピーのほうが良ければ、そういう活動を調整してくれる。

お風呂や授乳、オムツ替えなども常にスタッフが側にいてくれるので、不安なことがあればすぐに相談できる。日中、他のママや赤ちゃん、スタッフと一緒の部屋にいることで、ひとりぼっち感もない。もちろん、スタッフに赤ちゃんを見てもらっている間に、個室で仮眠をとることも可、だ。

患者の平均滞在期間は8週間ほどらしい。時間をかけて、みんなの力を借りながら、ゆっくり心と向き合っていく治療法なのだろう。

 

とはいえ、悪く言えば精神病院なので、入院するとなるとちょっと抵抗があるかもしれない。私も、最初にここに数泊してみたほうがいいと言われたときは、かなり抵抗があった。でも、このままでは夫の疲労もピークに達してきていたし、何か事故があってからでは遅いので、渋々行ってみることにした。次回はその滞在について詳しく書いてみたい。