マタニティマーク:イギリスと日本
先日、日本から友人Iちゃんがロンドンにお引っ越ししてきた。彼女もこの秋出産予定の妊婦さん。お茶をしにいったとき、私のカバンにつけているマタニティマークを見た彼女の最初の一言は、「そんな風にカバンに付けてて怖くない?」だった。
日本ではマタニティマークをつけているとトラブルに合う妊婦もいるとは聞いたことがあったが、まさか自分の身近な人からそのような話を聞くとは思ってもいなかったので衝撃だった。彼女は東京ではいつもカバンの内側にバッジは隠していたそうだ。
ロンドンのマタニティマークはこんなバッジ。
ロンドン地下鉄のウェブサイトから申請すれば、無料で郵送してもらえる。これをみんなジャケットにつけたり、カバンにつけたりするわけだ。キャサリン妃にも、妊娠中にこのバッジが贈呈された。
幸いなことに、私がロンドンでマタニティマークをつけていてトラブルに合ったことは、この妊娠中一度もない。むしろ、毎日の通勤では、行きも帰りも電車で座らせてもらって、本当にありがたかった。
誰でも、気づいた人がすぐにさっと立ち上がる。それがこの街のマナーだ。席を譲ってくれるのは優先席の人だけでは決してなかった。けっこう真ん中の方の席から「こっち、こっち」と呼んでくれる人も多かったし、そこまでヨタヨタ歩いていると、手を引っ張ってでも席まで連れて行ってくれようとした人もいた。バッジに気づかず座ったままだった人に謝られたことも何度もある。
混んでいる路線だと、身長の低い私は他の乗客の中に埋もれがちなのだが、席が空くと、私と一緒に立っている乗客がその席をガードして、私を座らせてくれるなんてこともあった。「ほら、あそこ空いてるよ!」と教えてくれる人にも助けられた。
けっこう年配の方から席を譲っていただいた時は申し訳なかったので、遠慮していたのだが「赤ちゃんのために座りなさい」「子供が生まれたら座る暇なんかないから、今のうちに座りなさい」と諭されることもしばしばで、恐縮してしまう。
ロンドンでも、何年か前に妊婦であることを証明しろと電車内で言われた女性の話がニュースになっていたようだが、この一例がニュースになっているくらいだからわりとレアな話なのだろう。こんな事例、日本だとTwitter上にうじゃうじゃ存在しそうだ。実際、アンケート調査によると、日本では10人に1人くらいが実際にマタニティマークをつけていて危険な目にあったようだ。
別の日本人の友だちMちゃんがロンドンに遊びにきたときも、バッジを付けていて安全なのか聞かれたし、東京でバッジを付けていてお腹をパーンと叩かれた別の知人の話も聞かされた。もちろん、日本でも席を譲ってくれる優しい人はたくさんいるのだろうけど、どうしてこうもギスギスした話が目立つ社会になってしまったのか・・・国を離れているが、悲しくなってしまう。
イギリスでは、私も含めて複数の妊婦が同じ車両にいたときも、全員座らせてもらっていたし、そのうえベビーカー連れのママやパパが乗車してきても、周りの人が彼らにちゃんとスペースを作ってくれていた。駅は階段だらけで、妊婦や子連れに優しいインフラはそこまで整っていないけど、人々のサポートという点では、こっちで妊娠生活できて良かったなと思う。日本のママたちも安心してマタニティマークがつけれるようになりますように・・・。