福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokan の私からみたロンドン生活

イギリス総選挙を終えて 〜私が感心した英国民の政治熱〜

イギリス総選挙が終わり、昨日からついに新しいメンバーでの国会討論が始まりました。保守党とDUPの連立交渉もようやく終わったものの、まだまだ不安定な保守党政権。あいかわらず話題の尽きない国政です。私は以前からイギリス人の政治への関心の高さには非常に感心していたのですが、今回の選挙において、ますますそう感じるようになりました。今日は私がこちらで驚いた政治熱について。

熟読されるマニフェスト

イギリスでは選挙前に各党がマニフェストと言われる公約・政策の方向性をまとめた冊子を発表します。これがまた濃い!今回の保守党のマニフェストは88ページ、労働党にいたっては120ページを超えて、びっしりと様々な問題に関しての意見が述べられています。これを皆さん、こんな風に振りかざしながら演説するわけです。

http://www.telegraph.co.uk/content/dam/news/2017/05/16/128818775_PA_General-Election-2017-large_trans_NvBQzQNjv4BqhapkVlcy4J6MLIykjOByPj0IwN0EfvoTZVLalWV4hmE.jpg

日本の政党の公約文書は、こちらのマニフェストに比べると物理的にも内容的にも薄っぺらく感じられるほどです。英保守党と、日本の自民党のページを比較ように置いておきます。(注:自民党の方は、厳密には「マニフェスト」ではないのですが、比較するには一番近い文書かと思います)

The Conservative Party Manifesto 2017

公約関連 | 政策 | 自由民主党

しかし、ここで大事なのはマニフェストの内容の認知度です。自民党や民進党の公約冊子なんて、今までちゃんと読んだことありますか?ニュースで誰か話題にしていましたか?

イギリスではマニフェストが発表されるやいなや、メディアや研究機関がこぞって各党の文書を熟読し、比較し、懸念点などを発表します。各党の目玉政策は大々的に報道されますし、お金の出所のよく分からない、夢見がちな政策なんかがあると、この段階で「現実味がない」と、こてんぱんにメディアから叩かれます。また、こっそり忍ばせておいた政策なんかも、絶対バレます。今回は保守党がしれっと入れておいた老人介護政策が「認知症税」と呼ばれて話題になり*1、ずいぶんと高齢者からの支持を失ったとも言われています。

国民一人ひとりがすべての政党のマニフェストを熟読したわけでは決してありませんが、普段のニュースの中で十分に要点がつかめる機会があったように思いました。

 

熱いテレビ討論

選挙前は何度もテレビ討論が行われました。一番話題になったのはBBCの党首討論でしょうか。「党首」討論なのに、保守党党首の首相が出ない!ということで話題になってしまったのですが・・。「政治家どうしで議論をするより、国民との対話に力を注ぎたい」という理由は言い訳にしか聞こえず、「選挙の言い出しっぺなのに議論にも来ないのか」と他党党首陣から叩かれまくってしまいました。(これもまた保守党敗戦の理由につながっていく・・。)

とはいえ、日本でも複数の政治家が議論をするテレビ番組はあります。私がびっくりしたのは、一般人が党首質問をする番組です。しかも生で

例えば、Question Time という番組では、現職の看護婦さんがメイ首相に医療機関への予算削減、看護師の給与の低さについて切実に訴えました。ここで首相は結局「魔法のお金の木なんてないのよ」と言い放ってしまい、ますます冷たい印象がついてしまったのですが。(しかも最近DUPに10億ポンド支払う契約をしたため、「魔法のお金の木はあるじゃないか」とまた叩かれるはめに・・。)

https://www.thesun.co.uk/wp-content/uploads/2017/06/theresa1.png?strip=all&w=937&quality=100

労働党党首コービン氏には、複数の観客から「いざとなったら核兵器を使うのか、使わないのか」と、平和主義と言われている彼には答えがたい質問がぐりぐり行われました。

これらのテレビ討論で、メイ首相の冷たさだったり、逃げ腰な態度だったりが目立ち、逆にコービン氏のブレない信念や、貧しい人たちへの気配りなどがより多くの一般の人にも目に入るようになったように思います。テレビで映る人柄だけで判断してはいけないというものの、両党首の印象の変化は大きかったですね。

 

地方での選挙運動

幸いなことに、この国では選挙カーに乗って政治家がご挨拶周りをする、なんていう騒々しいことはありません(笑)。その代わり、ボランティアを巻き込んだ草の根的な、地道な選挙運動が繰り広げられます。実は今回はうちの主人もボランティアに参加しました。ボランティアは主に、Leafletingといって、近所を練り歩いて家々のポストにビラを配る活動や、Canvassing(読み:キャンバシング、意味:戸別訪問)といって実際にドアを叩いて家の人と話をする活動を行います。ちなみにさっき知りましたが、戸別訪問は日本では禁止されているんですね!こちらでは候補者も時々ボランティアと一緒に戸別訪問して、投票者に直接政策を訴えます。

主人の話だと、皆さんよく話を聞いてくれるとのこと。もちろん時々失礼な人もいるようですが、そういう人の多くはもうすでに別の政党に投票すると決めているからだったり、主人が関わっていた政党が大嫌いだったりと、理由がそれなりにあったようです。大半は「Let's talk(話をしよう)!」と言ってくれる人が多く、皆さん非常に関心を持ってボランティアとも意見を交換してくれたようでした。見ず知らずの人と政治について話すなんて、日本ではあまり考えられないですね!

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また、以前のブログにも書いたように、Hustingsといわれる集会も、何度も選挙区内で行われ、様々な候補者の意見が聞ける機会が提供されていました。

fukuokaninlondon.hatenablog.com

 

 

国民それぞれが、すべての政策について熟知するのは無理です。しかし、イギリスでは、十分身の回りに政策を知る機会が提供されているように思います。もちろん、ニュースなんか見ない、ビラにも目を通さない、となれば話は別ですが、関心を持たざるをえないくらい様々なチャンネルから、政治の話が聞こえてくる国だと感じます。また、政治について一般の人が語ることができる、意見を言えるのも、お国柄を感じます。

 日本でも今週末は東京議会選です。国政と都政ではまたレベルが違いますが、日本でここまで政治への関心が高まるだろうかと考えさせられます。