福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokanな私のロンドン生活。2017年7月から海外育児生活も始まりました。

Brexit (英国 EU 離脱)による影響

英国の EU 離脱が決まってから 10 日ほど経った。こちらでの日々の生活に何かしら支障はあるか、と聞かれたのだが、特に変わりなく生活している。もちろん、日々あの政治家が辞めただの、次の総理は誰だだの、Brexit 絡みの話題は事欠かないし、EU 離脱へ向けてのハッキリとしたアクション・プランがまだ無いので、モヤモヤした感じは多々ある。身近な影響を少しまとめてみたい。

 

人種差別

残念なことに、投票を期に勢いを得た極右派の一部が、東欧系の移民や、イスラム教徒の女性に罵声を浴びせるという事例が EU 離脱決定後、各地で報告された。残留派の多かったロンドンでも、ポーランド人向けコミュニティ・センターに大きな落書きがされたり、地下鉄で罵られるがいたり、と決して人事ではなかった。また、代々イギリスに住んでいるインド系、アフリカ系の人々も「自分の国に帰れ」と野次られており、一体どこに行けというのよ、との声が上がっている。ヨーロッパからの移民に限らず、とにかくいろんな人種への風当たりが強くなっているように感じる。幸い、私個人的にそのようなことはまだ起こっていないが、身の回りにより一層気を配るようにしている。
 

採用状況

大手企業の中にはイギリス支部の採用を一部停止しているところもある、と聞く。今までヨーロッパ本社をイギリスに置いていた企業は、今後パリやベルリンに本社を移す可能性もあるのだろう。
 
現在イギリスにいるヨーロッパからの移民のステータスも、実は定まっていない。国民投票直後、キャメロン首相は「現在イギリスに住んでいる移民に影響はない」と声明をだしだ。しかし、次首相候補のテレサ・メイは先日テレビ番組で「交渉次第」だとし、批判を浴びている。
 
今後もユーロの取引をロンドンからできるのか、税金の影響はどうなるのか、ヨーロッパからの従業員は残れるのか、新規に採用できるのか、などがハッキリしてこないと、なかなか今後イギリスの大手の採用は伸びないだろう。
 

住宅事情

実はこれから家を買おうとしていたので、ここが一番痛いところだ。市場への影響はまだ未知数だとする見解が一般的だが、まだまだ物件の値段は相変わらず高いままだという人もいれば、いやいやこれから値段は下がるという人もおり、しばらくは混沌とした状況が続きそうだ。
 
貸入れの利子はなんだかんだ言って高くなるだろうし、
英ポンドが安くなれば海外からの投資もひょっとしたら増えてしまうかもしれないし、
移民が本当に減れば物件の値段は下がるかもしれないし、、、
 
とにかく不安要素が多すぎる。
 
 
これからまだしばらくは Brexit の話題から目が離せないようだ。

憎悪を煽る政治はやめよう

EU国民投票はついに明日に迫った。

 
日本でも報道されていたようだが、先週のコックス国会議員が極右思想者に殺害された事件で、一気にこの国民投票への空気が変わったように感じる。
ここ最近の有権者の関心が経済から移民問題に移っていた矢先にこの事件だ。移民問題に真摯に取り組んでいたコックス議員が、まさに反移民主義の男性に「イギリスを優先しろ」と叫ばれながら殺害されたという報道に英国中が衝撃を受けた。
 
「移民が増えると、ドイツのケルンみたいに女性がレイプされる」
「トルコ経由で中東のテロリストたちがイギリスにどんどん来る。イギリスが危ない」
 
対岸のアメリカでイスラム教徒を追放しようだの、メキシコ国境に壁を作ろう、などと訴えている誰かと似た、人種差別や憎悪を煽るような言葉が、ここイギリスでも連日繰り広げられていた。離脱を声高に政策として掲げる英国独立党 (UKIP) は、大きな宣伝用トラックに中東系移民の大行列の写真を載せて「EUに残るとこいつらが来るぞ」と言わんばかりの宣伝を始めたりもしていた。
 
英国民と移民
離脱派と残留派
 
移民はテロリストで、国民から職も家も奪っていく、、
離脱派は非人道的で、差別的だ、、
 
そんな社会を二分化するような流れがどんどんヒートアップしていたところで、コックス議員の事件がおきた。彼女が殺害された木曜から土曜まで、すべての投票運動が停止されたことで、必然的に誰もが自分の信じる派閥や、自身の主張を冷静に考え直す機会を得たのではないだろうか。
 
自分や、自分の応援している派閥は、建設的な議論を展開していただろうか。
自分も移民や、自分と違う人種、階級の人に対して、差別的な発言をしていなかっただろうか。
 
移民は税金も納めてくれるし、経済的利益も生む
離脱派はみんながみんな移民問題で投票しているわけではないし、欧州連合の政治的理念に納得できない人もいる
 
また、議論の最中に、相手派閥の議員の、プライベートに関してあれこれ口出ししていないだろうか。個人に対する口撃はよくない。
 
汚い投票運動ではいけないと、尊い命が奪われないと気づけないのはなんとも情けないではないか。
 
私も特定の離脱派議員に嫌悪感を抱いていたところだが、彼の意見に集中すべきで、個人的に彼を嫌ってはいけない、と改めて考えさせられた。建設的に意見を交わすということの大切さを痛感する。
 
投票運動が再開された日曜日のテレビ番組では、離脱派と残留派がお互いに「そういうふうな言い方はいけない」と、憎悪を煽るような発言を牽制しあう場面があった。国民投票が終わっても、議員、国民が健全な議論を続けられるよう期待したい。

スウェーデンの夏至のお祭り

昨年の今頃、ロンドンに引っ越して早々、ご縁があってスウェーデンの友人宅で、ミッドサマーのお祭りにお邪魔させてもらった。

 
ミッドサマーは6月末の夏至の頃に行われるお祝いごと。家族で集まって食事をし、太陽の恵みに感謝する。また、子孫繁栄を願う祭りでもある。長い長い冬が続く北欧の国々では、太陽の光あふれる夏は大変大事にされている。
 
私が訪れたのは Nyköping (ニーショピング)という小さな街。

f:id:nzi102:20160621061001p:plain

 
日が沈まない真夏の北欧のイメージがあるかもしれないが、それはもっと北極圏に近いところの話。これくらいの緯度になると、さすがに深夜すぎには薄暗くなった。ただ、深夜2時をまわっても、真っ暗になることはなく、3時過ぎるともうじわじわと明るくなり始めた感じだった。
 
お祭り当日は、女性は手作りの花冠を飾るのが伝統だそう。自然豊かなスウェーデン。朝からバスケット片手に、道路脇や公園で自由に草花を摘んでいく。道端に咲いた小さな花々も、こうして近くで見るとかわいいじゃないの。夏の訪れをそれぞれの花から感じとることができる。こうして、バスケットいっぱいに摘んだ草花と、前日にスーパーで買っておいた、やや大きめの花々とを編みあわせて、花冠を作っていく。
 

f:id:nzi102:20160621062532j:plain

 
これをつけて、友人家族の待つ家へ移動。家族でご馳走を囲んだランチでお祝いは始まる。スモークサーモンを使った前菜から、大量のミートボール、ニシンの酢漬け、新鮮なイチゴたっぷりのケーキなどが一般的なようだ。ミートボールのふわふわ具合は、さすが本場だ。そして、スナップスという、わりと強いアルコールのショット。飲む前にテーブルのみんなでわらべ歌を歌うのがマナー。誰かが飲むたびに歌わないといけないので、かなりの頻度で食事は中断されることになる(笑)
 
f:id:nzi102:20160621062826j:plain
 
ランチの後は、街の広場での伝統的な行事に参加させてもらった。このお祭りでは、Maypole と呼ばれる木の柱を広場に立て、その周りで踊ったり歌ったりする。
 

 
小雨の降る中、びしょ濡れになりながら子供と一緒にゲームに参加しているパパたちの多いこと!さすが男女平等社会の北欧社会だわ、と一人感心してみてしまった。
 
パパたちの活躍は夕飯にも続く。まだまだ日が暮れる気配もない夕方、外でバーベキューの準備が始まるのだ。
 
こうして夜遅くまで飲んで、食べて、歌って踊って、、たくさん語り合って、ようやく薄暗くなりかけた深夜近くにお開きとなるのだった。
 

f:id:nzi102:20160621064136j:plain

 
 
 

EU 国民投票:離脱派と残留派、双方の主張

ここ最近のイギリスのニュースは専ら今月23日に行われる EU 国民投票 (EU referendum) の話題でもちきりである。「イギリスは EU (欧州連合)から離脱するべきか、残留するべきか」を直接国民に問う、この選挙。BBC を始めとするテレビ各局は、ニュースとは別枠で、ほぼ毎晩特番を組んでおり、国民の関心度の高さが伺える。オズボーン財務大臣が「イギリス国民の一生に一度の決断」だと言ったように、イギリス国民は一国の運命を決める重要な決断を迫られている。

 
今日は簡単に、離脱派と残留派、双方の言い分をまとめてみたい。
 

離脱派の主張

「イギリスを取り戻す」と、日本の選挙でも最近聞いたようなスローガンを掲げている離脱派。彼らが最も憤っているのは、自国の方針を、自国だけで決められないこと、の一点に尽きるように感じる。経済、移民、防衛、など国民の関心の高い問題も、欧州全体で決まった方針に合わせなければならないことがもどかしくなってきているのだ。また、欧州連合ができたばかりの頃と違い、最近は28もの国が参加しており、政策がなかなかまとまらないことや、経済力の差が大きく、イギリスなどのの国の負担が大きくなってきていることなども大きなポイントだろう。
 
離脱派がよく持ち出す例は、次の2点だろうか。
 

①週に3.5億パウンド(550億円)もEUに払うのはやめよう。

経済力の高いイギリスは、EU に毎年、毎週高額の税金を外国に送っており、EU を離脱することでこの税金を医療や教育など、国内で使えるようになる、という。
 
選挙運動用の車やポスターに大々的に掲げている「週に3.5億パウンド」という数字が一人歩きしつつあるが、最近ではこの額は扇動的だと批判されている。実際には、かなりの額が払い戻されること、イギリス国内の様々な企業や研究に EU からの援助があること、などを加味すると、純粋に支払っている額はこの3分の1くらいになると言われている。
 
②移民が増えすぎているのに、制限できない!
ここ数年で、人口が100万人以上増えたロンドン。EU 諸国、とくに物価の低い東ヨーロッパ諸国からの安い労働力にイギリス人の職が奪われている、という長年ある不満の声だ。公共機関もキャパが足りないし、家も足りない、受け入れる側は大変だ、という悲鳴のように聞こえる。
 

これも、実際には私を含め、ヨーロッパ以外からの移民がハイペースで増えていることの方が問題だ、という反論がある。また、EU 離脱後、イギリスがヨーロッパ諸国の移民を制限すると、逆にイギリス人の EU 諸国への移住も制限されると警戒する声もある。特にスペインは老後の引越し先としてイギリス人に大人気なのだが、そんな老後の計画もなくなってしまうかもしれない。

 

残留派の主張

一方で残留派は主に、離脱した際の経済的ダメージを徹底して主張している印象を受ける。残留とはつまり現状維持なので、「残留するとこんな素晴らしいことがあるよ」とは、なかなか言えないのがもどかしいところだろう。残留派の主なメッセージは次の3パターンであるように感じる。
 
①現在 EU に所属していることで受けている日頃の恩恵
②離脱した際の経済的ダメージ
③離脱派の主張への反論
 
先日も財務省が全力で様々な統計を用い、いかに離脱が経済を悪化させるかを発表した。キャメロン首相は、EU 離脱は自分たちで景気をわざわざ停滞させる「DIY 不景気」だと話している。しかし、これまで EU を実際に離脱した国はないこと、予想値が大げさすぎることなどから、残留派の主張もまた扇動的だと批判されている。おそらく何らかのダメージはあるだろうが、政府が言うほど世界の終わり、というわけでもないだろう、というのが大方の見通しである。
 
 
残留にしろ、離脱にしろ、それぞれ政策・経済において様々なチャレンジがあることは間違いない。しかし今回の投票に関しては、そのような社会的問題云々よりも、結局のところ「ヨーロッパの一部としてのイギリス」と「ヨーロッパとは一線を画したイギリス」という 2 つのアイデンティティによる対立だと思う。あと一ヶ月弱、イギリス国民がどのような決断を下すのか目が離せない。
 

はてなブログ開設!

ロンドンに引っ越してから、早くも一年が経とうとしている。昨年夫の転勤が決まって、ドタバタと結婚、ビザ申請、引越し、転職活動をこなしてきた、なんとも濃い一年だった。

実は学生の頃、夏の短期留学・インターンシップでロンドンには数ヶ月住んだことがある。当時は、大都市として発展しながらも、街中にドーンと聖ポール大聖堂のような大きな古い建築物が残る様子には、大変衝撃をうけたものだ。残念ながら、短期留学は、その国の様子を垣間見るには良いものの、その国の本質を知るには期間が短すぎる、というのが持論なのだが、今回こうして数年はロンドンに住む機会が再びもらえたのはありがたい。

私が留学した頃に比べると、ロンドンは実に100万人以上人口が増え、ますます多様性あふれた大都市になっているように思う。この街から、学生の頃には気付かなかった文化や習慣の違い、政治・社会感、外から見た日本の話題などについて、少しずつ書きためていければと思う。

福岡県出身の私は、どうしても感情が高ぶると英語の翻訳も方言まじりになってしまうこと、また、自分の来たところ、初心を忘れないための思いも込めて、このようなブログタイトルとなっている。