福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokanな私のロンドン生活。2017年7月から海外育児生活も始まりました。

イギリスのEU離脱まで一ヶ月を切ったのだが

イギリスのEU(欧州連合)離脱予定日、3月29日が本当に目の前に迫ってきた。

 

が!

 

あいかわらず連日全く予想のつかない日々が続いています。毎週、いや、毎日のように政治情勢が変化し、名だたる政治記者のみなさんもなかなか先の予想ができずにいるようだ。

 

イギリスにいてもついていけないほど展開の早いBrexit事情だが、現段階の話をざっくりまとめるとこんなかんじ。

今何でもめているのか

メイ首相とEU代表とで取り決めたWithdrawal Agreement(離脱合意書)について、大きな議論がなされている。離脱合意書とはいえ、実はこの文書が取り決めているのは、正式に離脱する前のTransition Periodといわれる移行期間(2019年3月30日から2020年12月末まで)の話。本格的にEUを離脱する際の話は、まだ始まってすらいないのに、このもめ様、という衝撃。

 

この文書の中で特に問題になっているのが、アイルランドと、北アイルランドの国境問題。これはまた別のブログで書きたい深い内容だが、要はここに壁を作ってしまうと、北アイルランドもアイルランドに属するべきだとする人たちが、カンカンに怒ってしまうわけだ。では、イングランドの島の方でなにかしら税関チェックなどを設置するとなると、今度は北アイルランドだけ別の国扱いになってしまってけしからん、という人達もいるわけで。下手するとまた90年台のような内覧が勃発しかねない、やっかいな問題。いやはや、ブレクジット(Brexit)言い始めたときに、誰も考えんかったんかい!?と呆れる次第である。

 

ちなみに、約600ページにわたる離脱合意書は、オンラインで誰でも読むことができる。

www.gov.uk

 

3月12日に注目

離脱合意書にイギリス国会が承諾する、というのが離脱前の大きなステップだ。しかし、12月のクリスマス前にメイ首相が試みた投票では、「歴史的な大敗」と言われるほどの大差で与党を含む大多数の議員が大反対してしまった。

 

離脱合意書をEU側と修正して、再度イギリス国会に是非を問う、として年明けから首相は頑張っているようだが、特に大きな修正は今の所なされていない。再度国会に合意書を提出する日もズルズルと延期され続けているが、もうあまり日にちも残されていない。

 

現段階では次の投票は3月12日に行われる予定となっている。正直現段階では、ここで合意書が通るとは誰も思っていない。12日に合意書が国会を通らなかった場合、13日に「合意なき離脱」をするか否かの投票が行われる。これが通ってしまうと、29日をもって、移行期間もなしにイギリスはEUを飛び出すことになる。

願わくば、国会議員の先生方は正気を保って、「合意なき離脱」に反対票を投じ、14日「EU離脱を延期するか否か」の投票に持ち込んでほしいところである。

 

ホワイトデーまでには、ようやく何かしら先の見通しがたっている状態になりそうだ。

 

「合意なき離脱(No Deal)」は本当にあり得るのか

合意なき離脱のリスクはあまりにも高いように思われるし、実際政府が発表した調査書もそう断言している。例えば、イギリスは食料の30%以上をEUから輸入しており、3月半ばで合意なき離脱なんかが決まってしまっても、飲食業界は対応できず、スーパーの食料も品不足になる可能性が高い。医薬品もしかりだ。

www.bbc.co.uk

 

かなり基本的な生活に支障が出ると思われる中、「合意なき離脱」なんてさっさと論外にしてしまえばいいのに、と思うのだが、そうはいかないのがこのブレクジット問題の複雑さを象徴しているようにも思われる。「合意なき離脱」は決してベストな選択肢ではないが、それでも支持される理由として、次のようなものがある:

 

  • 離脱を延期すると、ずるずると永遠に延期され続けてしまい、結局EU離脱しないということになりかねないから、合意がなくてもこの3月にEUと手を切りたい。
  • とにかくメイ首相の取り決めた離脱合意書に納得できず、そんな合意無しで離脱したほうがマシ。
  • 「合意なき離脱」は危険だ、リスクが高いというのは、エリートの作ったでまかせだ。

また、首相が合意なき離脱を否定できないのも、与党内にこのような理由で合意なき離脱を支持するBrexiter(離脱派)がおり、場合によっては彼らの離党により、党が崩壊する恐れがあるため、だと言われている。

現に、2月27日に、スコットランド国民党が「合意なき離脱」はなんとしても避けるべきか否か、という投票を国会に提出したが、288対324票で否決された。これは、スコットランド国民党を毛嫌いする人たちが否決したという分も少しはあるのだし、3月13日という土壇場では賛成する議員も増えるとは言われているが、なかなか安心できない数字である。

 

願わくば

先日与党に嫌気が差して、独立グループ(The Independent Group)に仲間入りしたアナ・ソブリー(Anna Soubry)議員がよく言うのだが、首相を始め多くの議員が、国民ではなく自分の政党を第一に考えて投票をしているように思う。これは、政治の醜い現実なのだが、そろそろそんな政治劇をやっている場合ではないと国民の多くは感じているのではないだろうか。個人的には、No Dealは是が非でも避けてほしいと思うのだが。