イギリス総選挙2017結果 〜勝者と敗者〜
選挙から一夜明けたイギリス、まだまだ熱気が冷めません。いやぁ、すごい結果になりました。前回のブログでも書きましたが、みんな保守党がなんだかんだ少なくとも過半数くらいは取るだろうと思っていたんです。
fukuokaninlondon.hatenablog.com
しかし蓋を開けてみると過半数にすら至らなかったという・・・。これは痛い。
まだ興奮冷めきれぬ中、今回の選挙で私なりに思う勝者と敗者をざっくりと。
敗者:保守党、というかメイ首相
これからのEU離脱交渉を有利にすすめるための選挙、すなわち、保守党の席数を伸ばして圧倒的過半数の議会をもって交渉にあたりたかったメイ首相。言い出しっぺの手前、大多数で勝たないと面目丸つぶれの選挙だったのです。議席を減らすなんてもってのほか!
ところが結果は−12席、過半数に8席届かずという大失態。今日のニュースでも繰り返し使われていた言葉はBackfired(裏目に出た)や、Disaster(大惨事)。あわや内務大臣のアンバー・ラッド氏も不当選になりかけ(ぎりぎり400票差で当選)、ヒヤヒヤした選挙となりました。大きな敗因の一つはテレビ党首討論に意地でも参加しなかったり、マニフェスト内の政策を早々に撤回したりと、彼女のリーダーシップにもあり、厳しい立場に追い込まれました。今朝の険しい顔にも納得。
勝者:労働党、そしてコービン党首
今回勝ち組トップはなんといってもこの人、ジェレミー・コービン労働党党首。
今朝もなんて清々しい笑顔!正直あんまり期待されてなかったんです、この人(爆)。党内でも時々反乱が起きるくらい賛否の別れる党首で、当然メイ首相側も「この人相手なら、労働党はまとまらないだろうし、選挙は勝てる」と思い込んでいたところがあります。
ところが、選挙運動が進むにつれ、どんどん彼のスピーチはパワフルになっていき、選挙前予想でも保守党との差をグイグイ詰めていきました。ブレない信念に基づいて、熱く社会問題に立ち向かう姿が、特に若い世代から支持されました。結果、過半数こそ取れなかったものの、30議席近く席数を伸ばした大健闘っぷりでした。
勝者:若者層
日本のように、イギリスも高齢化社会が進んできていて、選挙運動も年配の方々にターゲットをしぼることがよくあります。EU離脱投票も、年齢層が高いほど離脱側に投票した傾向がありました。しかし、今回はコービン党首の熱い思いに押され、若者層の投票で結果が大きく変わった区がいくつもありました。大きな大学のある街では投票所に大行列ができていたほど、若者たちが立ち上がったのです!
今回の18〜24歳世代の投票率は70%を超えるとも言われています。この世代の投票率は、前回選挙で45%、EU離脱投票でも60%前半だったことを踏まえると、これはすごい快挙です。若者の声を無視していては、もう選挙には勝てない時代になったのです!
敗者:イギリス独立党
イギリス独立党(UKIP)は大きな目的の一つである「イギリスの独立」すなわち「EUからの離脱」が実現してから、少し目標を見失っている感があり、もともとの席数は減るだろうと予想されていました。実際は予想よりひどく、党首であるポール・ナタル氏自身もわずか3,000票ほどしか集めることができず、不当選。全国どの選挙区でも候補者は勝てず、今国会において議員数0になってしまいました。ナタル氏はすでに辞任すると発表しました。今後、新しい党のアイデンティを確立していかないと生き残れないでしょう。
敗者:スコットランド国民党(SNP)
「EU離脱交渉後に、スコットランドの独立投票を再度行う」というのが公約の一つであったこの党。前回選挙ではそうとう勢いがあったのですが、スコットランド人的には、もう独立騒動はいいかな、という疲れが見えつつあります。下の地図を見ると、黄色がSNPなのですが、ほぼ黄色で埋まっていた2015年に比べ、今回はずいぶん席を失った様子が伺えます。
勝者:女性議員
今回の選挙では200人もの女性議員が当選しました。これまでのイギリス下院議会最多だそうです。1918年から2015年までの100年弱の間に当選した女性議員の総数が456人だった*1ことを踏まえると、一気に200人というのはとんでもない数字だと感じます。これでもやっと全議員の30%。50%近くまで頑張ってほしいですね!
この選挙が意味することは?
この選挙が意味するところは、まだまだ白熱した議論が各メディアで行われていますが、だいたいまとまりつつある意見はこんな感じ:
- EU離脱交渉に余裕を持って取り組むどころか、むしろズタズタの状態で挑まなければならなくなってしまった
- 保守党が掲げる「Hard Brexit」(自由貿易協定からの完全な離脱、EU間の移動の自由からの離脱)に、国民がNOと言った結果がこの選挙である
- スコットランド独立投票は、たぶんしばらくない
最終的に保守党が連立して政権を保つことになったのですが、労働党やその他の党に投票した国民一人ひとりが、保守党の好き勝手にさせないように、今後も引き続き政治への関心を保つ必要がありそうです。