福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokan の私からみたロンドン生活

ドナルド・トランプの当選を振り返って

2008年、オバマが初当選したときに、私はアメリカにいたのだが、当時の選挙は希望に満ち溢れていた。大学のテレビを囲んで、オバマの就任演説を見ながら涙するアメリカ人を見て、この国はとんでもないパワーを持っていると感じたものだった。それに比べると、今年の選挙のなんとダークなことだろう!今年の選挙では、絶望と恐怖の涙を流した人がどれだけいることか。

 

ドナルド・トランプ氏がアメリカ大統領選を制覇してから、二週間が経とうとしている。選挙後最初の一週間は、ショックでなにも書きたくないという日が続いた。私のFacebookが、アメリカ人友人たちの悲痛な叫びで埋め尽くされていたことの影響も大きい。

 

ゲイ・レズビアンを公表している友人たちは、ほぼパニック状態で、「先日結婚したばかりなのに、この権利は取り上げられてしまうのではないか」「これからもっと差別をされるのではないか・・・ゲイの印でもつけろと言われるのだろうか」など、心の底から恐怖を感じている様子が痛々しいほど伝わってきた。

 

黒人、インド人、アラブ系、ヒスパニック系の友人たちの中には、すでにトランプ支持者から「国に帰れ、お前みたいなやつはトランプさんが追放してくれるわ」と罵声を浴びせられた人もいたし、「今日は一人で外を走りに行くのはやめておいたほうがいいかしら」「旦那は白人だから、なんだかこの恐怖感を100%わかってもらえない」という不安な声で溢れていた。白人の友人たちのショックも痛々しく、特に小さい子供をもった人たちは「これをどうやって子供に説明すればいいのか」と嘆いていた。

 

先日読んだニュース記事の中で、民主党はマイノリティの権利など、文化的な問題に焦点を当てていたが、国民が求めていたのは経済政策、現状からの脱却であって、その声をかき集めたのがトランプだった、といった趣旨の主張があった。多くのいわゆる「ミドル・クラス」と呼ばれる中産階級の人たちは、本当に不満が溜まっていて、それどころじゃないのだ。自分たちの暮らしが苦しいと、文化的な人権問題よりも、自分のお財布事情の方が切実な問題になってしまうのは、仕方ないだろう。

 

Make America Great Again (アメリカをまた素晴らしい国にしよう!)という曖昧なスローガンは、どのようにも解釈できるから、こういう不満を吸収して、中身が無いままどんどん大きくなってしまった。どのように「Great」な国にするのか、という議論がほとんどなされないまま選挙の結果が出てしまったところは、本当にEU離脱の中身がわからないまま離脱が決まってしまったイギリスの国民投票と重なる。どちらも、これまでの政治組織からの脱却、政治のマンネリ化にうんざりした人々の声だ。(そう考えると、レ・ミゼラブルの民衆の歌が脳内リピートされる・・・)

 

しかし、やはり問いたい。不満なのはわかるが、こんなにモラルのないリーダーで良いのか、と。「品がなくても、経済を良くして、アメリカをGreatにしてくれるなら文句ないわ!」という投票者があまりに多すぎて、その感覚がよくわからずにいる。

 

一国のリーダーとなる人が、

障害者を笑い者にしていいのか?

意見の違う人に耳を傾けず、ひたすら追い出し続けていいのか?

特定の人種を「強姦犯」呼ばわりしたり、「テロリスト」扱いしたりしていいのか?

有名人だからといって、女性を軽視していいのか?

何年も脱税しまくってていいのか?

 

もちろん、もしかしたら(願わくば)、色々口汚いことを言っていたけど、トランプも本領発揮すればすばらしい大統領になるかもしれないじゃないか!しかし、ここ数日のチーム編成や、安倍首相との会談のニュースをみると不安要素だらけだ。だからこそ、泣いてばかりもいられないのだ。バーニー・サンダースを始め、色んな人が声を上げ始めている。選挙は終わりじゃない、新たな戦いの始まりなのだ。そして、私達アメリカ国外の人も、外からプレッシャーをかけていかないといけないのだ。