福岡んのロンドン暮らし

福岡人=Fukuokanな私のロンドン生活。2017年7月から海外育児生活も始まりました。

イギリス総選挙を終えて 〜私が感心した英国民の政治熱〜

イギリス総選挙が終わり、昨日からついに新しいメンバーでの国会討論が始まりました。保守党とDUPの連立交渉もようやく終わったものの、まだまだ不安定な保守党政権。あいかわらず話題の尽きない国政です。私は以前からイギリス人の政治への関心の高さには非常に感心していたのですが、今回の選挙において、ますますそう感じるようになりました。今日は私がこちらで驚いた政治熱について。

熟読されるマニフェスト

イギリスでは選挙前に各党がマニフェストと言われる公約・政策の方向性をまとめた冊子を発表します。これがまた濃い!今回の保守党のマニフェストは88ページ、労働党にいたっては120ページを超えて、びっしりと様々な問題に関しての意見が述べられています。これを皆さん、こんな風に振りかざしながら演説するわけです。

http://www.telegraph.co.uk/content/dam/news/2017/05/16/128818775_PA_General-Election-2017-large_trans_NvBQzQNjv4BqhapkVlcy4J6MLIykjOByPj0IwN0EfvoTZVLalWV4hmE.jpg

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イギリス総選挙2017その後 〜DUP(民主統一党)との連立の行方〜

先日のイギリス総選挙で過半数を取れなかった保守党。今後、政策を議会で通していくためには、他の党との協力体制が欠かせないのですが、そこで白羽の矢が立ったのがDUP(北アイルランドの民主統一党、Democratic Unionist Party)。

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スコットランド国民党はEU離脱に反対だし、自由民主党は一昔前に保守党と連立して苦い思いをしたことがあり、両党とも今回の保守党との連立はまっぴらだ、というところだったのでしょう。では、このDUPですが、そもそも選挙前にそんなに注目されていた政党ではなく、みんな不意打ちを食らった感があります。DUPの公式サイトはアクセスが集中して落ちましたし、DUP専門家の人は選挙翌日、テレビ番組に引っ張りだこで、声がかれてしまっていましたもんね!私も勉強不足でしたので、DUPについて少し調べてみました。

 

複雑な北アイルランド政治

そもそもDUPを理解するにあたって、北アイルランドについて知らなさすぎることを痛感。ぼんやりと北アイルランドでテロ!というニュースを見た覚えがあるくらいでしたが、トニー・ブレア首相の時代の頃まで闘争が続いていたと聞くと、あれ、けっこう最近じゃない、という感じですよね。

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イギリス総選挙2017結果 〜勝者と敗者〜

選挙から一夜明けたイギリス、まだまだ熱気が冷めません。いやぁ、すごい結果になりました。前回のブログでも書きましたが、みんな保守党がなんだかんだ少なくとも過半数くらいは取るだろうと思っていたんです。

fukuokaninlondon.hatenablog.com

しかし蓋を開けてみると過半数にすら至らなかったという・・・。これは痛い。

まだ興奮冷めきれぬ中、今回の選挙で私なりに思う勝者と敗者をざっくりと。

 

敗者:保守党、というかメイ首相

これからのEU離脱交渉を有利にすすめるための選挙、すなわち、保守党の席数を伸ばして圧倒的過半数の議会をもって交渉にあたりたかったメイ首相。言い出しっぺの手前、大多数で勝たないと面目丸つぶれの選挙だったのです。議席を減らすなんてもってのほか!

ところが結果は−12席、過半数に8席届かずという大失態。今日のニュースでも繰り返し使われていた言葉はBackfired(裏目に出た)や、Disaster(大惨事)。あわや内務大臣のアンバー・ラッド氏も不当選になりかけ(ぎりぎり400票差で当選)、ヒヤヒヤした選挙となりました。大きな敗因の一つはテレビ党首討論に意地でも参加しなかったり、マニフェスト内の政策を早々に撤回したりと、彼女のリーダーシップにもあり、厳しい立場に追い込まれました。今朝の険しい顔にも納得。

https://espnfivethirtyeight.files.wordpress.com/2017/06/ap_17160137283667.jpg?quality=90&strip=info&w=1024&ssl=1

 

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イギリス総選挙 予想と各党比較

イギリス総選挙まであと2日となりました!今週木曜日に投票が行われます。先日のロンドンテロで、論点は一気にテロ対策に移りつつある選挙運動です。今日は選挙前に各党についての簡単なまとめと、予想図を書き留めておこうと思います。

 

そもそもなんの選挙?

もともとメイ首相はEU離脱がすむまでやらないと言い張っていた選挙。ところが急に4月に心変わり!「離脱交渉を優位に進めるため、イギリス国民が一致団結するための選挙」という名目でしたが、要は、現在ギリギリ多数を占める保守党議席を、もっと余裕を持って伸ばしたい、というところでしょう。

 

選挙の行方を予想する

結局保守党が勝つだろうとは言われていますが、もともとメイ首相が思っていたほど大差では勝てないのでは、と思います。むしろ大差で勝てないと、言い出しっぺの首相の顔は立たないのですが・・。

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イギリス総選挙前に区の集会に行ってみた

6月8日はイギリス議会選挙が行われます。あんだけ「Brexit(EU離脱)が終わるまで選挙はやらない」と言い張っていたメイ首相でしたが、4月に態度を一転。EU離脱の交渉を優位に進めるため、今一度選挙を!という名目ですが、つまりは今ぎりぎり過半数を占める保守党議員を、交渉前にもう少し増やしたい、というところでしょう。

 

選挙まであと2週間をきり、先日はうちの区でもHustingと呼ばれる集会に行ってみました。Hustingとはイギリス英語で、政治活動の場を広く指すようですが、主に選挙前のパネルディスカッションや、集会を指すようです。

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今回参加したのは写真左から

  • 自由民主党 ジョージ・ターナー
  • 女性平等党 ハリニ・イェンガー
  • 司会進行の公共政策研究機構ディレクター、トム・キバシ
  • 労働党 ケイト・ヒューイー(現職)
  • 緑の党 ガルナー・ハスナイン
  • 海賊党 マーク・チャップマン

保守党候補は現れず、大ブーイングでしたが・・。この区は現職ヒューイー氏 vs 自由民主党のターナー氏という構図ができていて、この二週間でどれくらいターナー氏が追い上げられるかが勝負の鍵をにぎると言われています。

会場は平日夜にも関わらず、軽く100人を超える地元民でいっぱいで、若い人からお年寄りまで幅広い年代の人が集まりました。(人種的にはほぼ全員白人でしたが。)事前に観客から集めた質問をベースに、集会は進められました。いやぁ、地元の皆さん、熱かった。白熱した議論トピックと内容はこんな感じ。

Brexit・EU離脱について

この選挙区では過半数以上がEU残留を希望していたのにもかかわらず、現職ヒューイー氏は昨年EU離脱派として運動・投票を行いました。そういう経緯もあって、他政党は「ヒューイー氏は選挙区民の民意を反映しない政治家」というネガキャンを展開中です。会場からはオランダ系移民の看護師さんが「EUからすでにイギリスに移住している私達の権利はどうするのか。これから私と、私のドイツ人の妻の生活はどうしてくれるんだ」と熱くヒューイー氏に挑戦しましたが、氏は典型的な政治家らしく、直接の回答はしませんでした。

 

民主主義について

保守党は公約で、選挙に参加するのに写真つきIDが必要になるようにする、としていますが、それについての意見を求められた候補者たち。「特に意見はない、あまりこの区に影響はない」とするヒューイー氏に対し、すかさずターナー氏が「写真付きIDというのは、貧困層では持っていない人も多い。選挙に参加しにくくする悪しき政策だ」と果敢に挑戦しました。

 

キツネ狩りについて

「この時代にキツネ狩りがなぜ選挙で話題になるのか、全くもって理解ができない」という緑の党に私も賛成なのですが、キツネ狩りの復活も保守党の公約の一つ。区民はキツネ狩り反対が多い中、ここでもヒューイー氏は反対票を投じる約束はせず。「区民の意見を聞いて投票する」とした海賊等にここは一本取られたかんじ。

 

経済について

国債の増加についての意見交換がなされました。ここでもユニークな意見は海賊党のベーシック・インカム政策でしたが、これについてはまた別の機会にブログで。

 

公共サービスについて

学校の芸術科目の予算が減っていること、保育園問題、公共交通機関や空気汚染の問題、家賃相場高騰問題などなど、区民の日々の生活に関わる問題が議論されました。この辺はさすが現職、ヒューイー氏が現実的な政策を提案していた印象です。ただ、この辺で時間切れとなり、まだまだ質問し足りない観客が「うちのこの問題はどうなんだ」「これはどうなんだ」とワーワー騒ぎ出し、一時騒然となりました。みなさん、いろいろと不満は溜まっている様子。

 

イギリス国民はEU離脱のときもそうでしたが、本当によく政治に参加する国民だなと感じさせられます。収集がつかなくなるくらい、皆さん言いたいことがあるんです!いいことではないですか。意見の違いは色々ありますが、これからの国の行方、日々の生活に関わる政策に政治家にきちんと意見を述べられること、国民同士でも建設的な議論ができることは、民主主義の基本の基でもあります。 これから選挙までますます選挙運動は白熱しそうですが、行方を見守っていきたいと思います。

 

 

ロンドンでの出産準備 28週検診編

妊娠生活もあっという間に後期に入りました!最近では妊婦バッジをつけてなくても、妊婦だと認識してもらえるくらいお腹が出てきました。

 

後期最初の検診はだいたい28週目に行われます。主な目的は血液検査です。採血はいつも苦手・・・心して検診に向かいます。しかし

 

「あら、今日は血圧がすごく低いわね。今日は採血はやめておきましょう。」

 

どひゃー。「後日、大きな病院の方に行って採血してね。」とのこと。実は、普段の検診は、近所のGP(一般医)のオフィスの一部を借りたスペースで行われています。大病院から助産師さんが週三日くらい派遣されてくる感じ。メリットは毎回激混みの大病院に行ってグダグダ待たされることがないこと、また、大病院よりも近いので容易にアクセスできることです。ですが、少し問題があると、大きな精密機器があるわけでもないし、入院するベッドがあるわけでもないので、あまり対処できないんです。そんなところで気絶されても困る、というかんじでした。そりゃそうですね。

 

ということで、数日後、大病院の方へ向かうことに。ここは「採血室」があるくらいの大病院。採血室の中はさらに10部屋くらいに別れていて、チケットの番号で呼ばれた患者さんがどんどん個室に入って採血されていきます。なんて効率的。

 

この血液検査の結果は後日郵送され、31週検診で助産師さんと結果の見直しなどが行われます。私は案の定、鉄分が基準値より低いという結果でした。鉄剤を処方してもらわないといけないのですが、助産師さんだと処方箋出せないんですね。なので、今度はまた別途GP(一般医)の予約を取って、処方箋を出してもらうという・・・。

 

イギリスの医療システムは、無料でありがたいのですが、こんな感じであちこちに行かされることも多く、ちょっと大変です。2回の検診に行くのに仕事にも遅れていったのに、更にもう2回病院に行く羽目になり、なかなか職場にも迷惑をかけてしまいました。産休までもう少しです。このまま次の検診まで何もないといいなぁ。

オープンなイギリス王室から考える日本の皇室

眞子さまご婚約などで近日海外からも注目されている日本には天皇制。イギリスにも似たような王室制度がありますが、国民との関わり方は随分違う気がします。そこで今日はイギリスに来てから、王室と国民の関わり方で感じたことを少し紹介します。

 

イギリス王室のソーシャルメディア

まずはFacebookやInstagramなど、ソーシャルメディアでの発信力。Facebookページは370万いいね、Twitterも295万フォロワー。コメントを見ても、イギリス人の王室好きっぷりが伝わってきます。

さすがに女王陛下ご自身が書き込みをされることはほぼ無いようですが、2014年に一度科学博物館のイベントで書き込みをなさったそう。 

blog.twitter.com

また、昨年はハリー王子と一緒にビデオにご出演されて話題になりました。

 セリフこそ少ないものの、インパクトがでかすぎます。祖母である女王陛下のことを「ボス」と呼ぶハリー王子ですが、お二人のやり取りはやっぱり微笑ましいですね。

 

公式ウェブサイトも、モダンで、キラキラしてます。

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もちろんスマホ対応。女王陛下だけでなく、チャールズ皇太子ご夫妻のご活動、キャサリン妃自身が撮った子どもの写真なども投稿されています。宮内庁のウェブサイトと比較するとその差は歴然ですね。

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宮内庁の方はちょっと一昔前のデザインのままでちょっと残念です。

 

イギリス王室は、ソーシャルメディアなどを通して、上手に広報をしているなぁと感心します。一般の人にも王室を身近に感じてもらうには、ニュースや公式なスピーチばかりでなく、このような形でお姿を見せてくださるのが、現代社会には向いていますね。

 

イギリス王室の社会活動

イギリス王室は社会貢献にも大変積極的です。先の女王陛下とハリー王子のビデオも、王子が関わっているInvictus Gamesという、 退役軍人たち(特に兵役中で障害を負った人たち)向けスポーツイベントの広報用のものでした。

また、ウィリアム王子・キャサリン妃ご夫妻と、ハリー王子が協力して啓蒙活動に励んでいるのが、メンタルヘルスの問題。メンタルヘルスとは精神疾患だけでなく、ストレスやトラウマなどが引き起こす心の健康全般を指します。見るからにわかる病気や怪我をしている様子に比べて、まだまだ心の健康ってないがしろにされがちです。カウンセリングに行っているのは悪いことのような印象もありますし、心が弱いことは甘えであるかのように受け取られることもあります。そういうメンタルヘルスに関するネガティブな環境を少しでも変えたい、という思いで始まったご活動です。

先日はハリー王子ご自身が、母であるダイアナ妃を亡くしてから、いかに精神的サポートが必要だったかを訴えました。また、ウィリアム王子もレディ・ガガとメンタルヘルスについてご対談なさいました。幼いころに母親をあんな事故で亡くしてしまえば、もちろんトラウマにもなっていることでしょう。このようにお二人がオープンにご自身の心の健康についてお話をしてくださることで、「It's OK to Say - 心の問題があるってもっとみんな打ち明けていいんだよ」ということ、また対話を通して心の傷を癒やしていこう、というメッセージを国民に届けられました。

www.youtube.com

 

あまり自分の感情についてはオープンにしないのは日本の皇室でも、イギリスの王室でも同じ。なので、二人の王子がここまでオープンに過去の心の傷についてお話されたことについては賛否両論ありますが、これもまた、より国民のそばに寄り添う、新しい時代の王室と国民の関わり方なのかもしれません。

 

精神的な病といえば、日本の皇室でも雅子さまが長い間適応障害で苦しんでおられます。ご自身がまだご病気の間に、ご本人にこの問題について啓蒙活動を!なんていうつもりは、もちろんありません。しかし、宮内庁・日本皇室は、長年に渡り、ひょっとしたらメンタルヘルスへのこうした偏見を改善する機会を逃してしまったのかなぁ、という気もします。むしろ、適応障害やその他精神的問題への寛容度も、ご病気が長期化するとともに悪化さえしている気もして、残念です。

 

 

このように、イギリス王室、とくに若い世代の王家の皆さんは、現代に合った国民との関わり方を日々模索しているようすが伺えます。日本の皇室も、いろいろと政治的な議論がなされている今だからこそ、もっとオープンに、新しい国民との関わり方を模索してもよいのではないでしょうか。